ブライダル写真(カメラマン)を辞めた理由。

※ こちらの記事はnoteにて公開していたものを加筆、修正したものになります。

目次

もうお腹がいっぱい

何だかんだで駆け出しの頃から撮っていたブライダル写真。

気付けば10年以上撮っていたことになりますので、ブライダル業界に
育てて頂いた気持ちも大きいです。

もちろん感謝が大きいですが、正直「ちょっともうお腹いっぱいだな」
と言う部分もありますので、今回はその辺を書かせて頂こうと思います。

お前そうじゃねぇだろ?

これは当時のお師匠さん(某ホテル写真室のリーダーの方)に
撮影後、毎回言われていた言葉です。

撮影を終え、事務所に戻りデータチェック、フィードバックを頂く。

「お前そうじゃねぇだろ?」

人が人に教えると言うのは、相当エネルギーが要ります。

当時は恥ずかしながら、ある意味教えてもらうのが当たり前のように
思っていた部分もありましたが

技術職の世界においてそれは、稀有なことで
「見て盗んで勝手に成長しろ」が今も昔もスタンダードだと思います。

その中に置いて「まだ若いから伸び代がある」と言う理由で

手取り足取り教えてくださったことは、今でも感謝でしかありません。

正直、新郎新婦お二人のためにと言うより

「この人に認めてもらいたい。恩を返したい」

と言う理由で撮っていましたが

それが結果としてお二人のためになれたのだと思います。

基本的には素晴らしい仕事だと思う

ブライダル写真の闇とか、ブライダルカメラマン底辺とか
諸々のキーワードで検索して頂ければ

ブライダル業界の問題点みたいのは
沢山出てきますが、基本的には素晴らしい仕事だと思っています。

自分の場合、都内大手ホテル→ゲストハウス→他のホテル→
持ち込みカメラマンと辿りましたが

どの会場でも、納品後に新郎新婦から
お礼の手紙やお礼の品(お菓子)など本当に多く頂戴しました。

また前撮りの段階から指名を頂くことも多かったので
当日の施行も、とても楽しく撮影させて頂ける機会に恵まれましたし

恥ずかしい話ですが、ちょっと泣きそうになりながら
撮影させて頂いたことも沢山あります。

家族との絆、友達との絆、戦友との絆。

様々な物語がそこにはありますし

その一瞬一瞬を残させて頂けるのは、やはりカメラマン冥利に尽きると言いますか

ブライダルカメラマンをやっていて良かったな思う瞬間でもありました。

それでもコンプ(クレーム)がゼロと言うことはない

人と人と言うのは、どうしても相性みたいなものがあります。

それこそ前撮りからご指名を頂き、その段階からコミュニケーションが十分に取れ、

また当日を一緒に迎えることが出来るお二人に関して言えば

ほぼ問題無いと言いますか、余程のヘマでもしない限り
幸せに撮影を終えることが出来ると思います。

と言うのも先方(お二人)は、こちらの写真を見て、

このカメラマンが良いと
ご指名してくれてるので

そもそものスタート地点から好意的に接してくれますし、

こちらも良い写真を絶対残してあげたいと自然に思えますからね。

ですが、通常の場合、お二人とは初めましてで、コミュケーションも
そこまで取れない内から撮影に入っていくことが大半でありますので

クレームが発生しやすい環境にあると言うのは
紛れも無い事実でもあります。

雨を晴れにして欲しい

「快晴のガーデンで写真を撮りたかったから、ここに決めたのに
雨なんて困る。晴れにして欲しい」

上記の理由でクレームを頂いたことがありました。

これは会場へのクレームでもありましたが
カメラマンへのクレームでもありました。

正直なことを言いますと

「カメラマンはカメラは扱えるが天道は扱えないので、勘弁して欲しい」

と言う気持ちがありましたが、
要は配慮が足りなかったと言うことになります。
(何らかのサービスをするべきだろと言うことです)

これはブライダル写真を撮りはじめて数年が経過し
高額商品も撮らせて頂けるようになり

良くも悪くも一種の”慣れ”が出てきた頃に頂いたクレームでしたので
今でも鮮明に覚えております。

クレーマーと言ってしまえば、それまででありますが
会場側(プランナーなど)レベルでのクレーム案件となりますと

正直、カメラマンレベルで何とかするのは
大分厳しい状態となります。

最終的には「クレーマーだからお前は気にしなくて良い」と言うことに
なりましたが、雨を晴れにしろなんて無茶苦茶なことを
言うくらいでしたので

それ相応の不手際か何かがあった可能性はあるのかなと
今では思います。

カメラマンがあなたで良かった

これは先述の方達とは逆で、カメラマン(自分)だけ
5段階評価で5を頂き、それ以外は全て1と言うのがありました。

詳細は省かせて頂きますが、新婦様が少し精神疾患をお持ちの方で
対応注意の方だったんですね。

それを会場責任者はじめ、会場スタッフの認識不足、連携不足のため
ご不快な思いを沢山させてしまったと言う事案がありました。

正直、メイクシーンの撮影終わりくらいで
クレームになるのは確定してしまっている様な状態でしたので

会場側から写真のサービスをしてくれと言われるのは
明白でしたし、案の定言われました。
(このパターンは実は凄い多いです)

そのため、ロケーション撮影は入ってませんでしたが
移動の合間に通常は行かない場所でのロケーション撮影。

宴後オプションは入ってませんでしたが
無料で1時間程度のロケーション撮影。

それ以外にもご希望のものは、全て撮らせて頂く。

経験者の方でしたら分かると思いますが
宴後ロケに1時間使うと言うのは相当です。

10年以上も婚礼を撮っていると
正直、覚えてる二人なんてほんの僅かです。

と言うかご指名以外で順調に行った二人程、覚えてないもので
思い出すお二人は、クレームになってしまったお二人だったりもします。

結果として、お二人に写真はとても喜んでもらえ
お礼のお手紙とお気持ちを頂いたのですが

結局、アルバム代以外は全額返金となったと
後にお伺いしたので、正直何とも言えない気持ちにはなります。

でもこうゆう事案と言うのは
きっとどこの会場にもありますし、近い経験をされてるカメラマンさんも
非常に多いことかと思われます。

現場の士気は上の人間の質で一気に変わる

これはカメラマンを大事にする会社(社長、リーダー)と
カメラマンを駒としてしか見てない会社(社長、リーダー)と

変換して頂けるとご理解頂けるかと思います。

自分が最初のホテルからゲストハウスに異動した理由が
正にそれに当たります。

こんなのは婚礼業界に限らず、どの業界でも
あるあるのことですが、人を大事にしない人間の下で働くこと程、
不幸なことはありません。

サービスの質も下がりますし、手を抜くつもりは無くても
士気が下がりに下がってるので、無意識レベルで手を抜いてしまう。

当たり前ですが、この様な状態は
お二人にも会場側にも自分にも良くはありません。

頭のオカシイ人間なんて腐るほど居る

業界の体質がそうさせて居る部分も多いかと思いますが

・外部業者に富士山以上に高い位置から圧をかけまくる会場責任者。
・誰にでもブチ切れるプランナー。
・持ち込みカメラマンには、これでもかと言うほどの嫌がらせをしてくる会場スタッフ及び責任者とプランナー。
・お局介添の理解不能なローカルルール絶対主義。

正直、こんなのはどこにでも居ます。
ある意味、普通のことです。

でも真逆で素晴らしい責任者、プランナーさんスタッフさんも
数多く居ます。

業界限らずですが、清濁併せ呑むくらいで丁度良いと
言う感じなのかもしれません。

お二人に寄り添えなくなった

これは多分、年齢的な部分も大きいかと思います。

今、自分は40前くらいになりましたが、コロナ前あたりから
ちょっともうキツイなと言うのは感じてました。

インスタの影響が無いとは言えませんが

当日、いきなりリクエストとして
至る所のゲストハウスの写真をA4ベタ焼き10枚くらいを
渡され全部撮って欲しいと。
(ここはホテルで、そもそも海なんてありませんが…)

など、これに似たようなことは沢山ありましたし
沢山経験してきました。

最初は、何とか近いロケーションで近い撮影をして
お二人に喜んでもらいたい。

その気持ちがありましたし、それが出来る
体力と気力があったと思います。

ですが、正直34,5歳くらいの時点で無理になってきたと言いますか

20代、30代前半の新婦が撮って欲しい写真と、自分の撮りたい写真、
または撮れる写真。

そこが今はまだギリギリのとこでリンク出来ているが
あと数年で無理だなと。

つまりミスマッチが起こってくるので
これは誰にとっても不幸でしかないと言うことです。

良くありがちなのが、ホテルの会場カメラマンさんで
同じものをずっと撮ってきて50代、60代くらいになられてる方。

悪く言うつもりはありませんが、多分、その方々の撮ってる写真と
お二人が望んでいる写真は天地ほどの乖離があると思います。

でも、それでずっと食えてるので(食えてきたので)
技術革新も無ければ、発展もありません。

これが式場の会場カメラマンは下手と言われてしまう所以です。

終わりに

何だかんだと長くなってしまいましたが
自分がブライダル写真を撮らなくなった理由は

「気力、体力共に、お二人に寄り添えなくなったから」

いえ正確に言うと、そこまでのモチベーションが
無くなったからとも言えます。

ただブライダル業界に10年近く居て
自分は本当に良かったと思っています。

大変なのは当たり前ですが、良くも悪くも
本当に様々な学びがありました。
(決して嫌味などではなく…)

ブライダルカメラマンと言うのは
撮影技術以外にも、ホテルでしたら

ホテルマンとしての素養、気質も求められますし
一種の様式美みたいなものもありますので

適正がある方でしたら、非常に得るものが多いのではないかと思います。

自分自身も適正があった方だと思いますので
10年以上も続けてこれましたし

ブライダルを通して学んだことが、他の撮影で活かされることは
非常に多くありました。

年相応の仕事と言ったらあれですが

30代までの仕事と、40代からの仕事と言うのは
また変わってくるものだと思いますので

しっかりと次の10年の仕事に取り組んでいこうと思います。

ここまでお読み頂き有り難う御座いました。
またお会いしましょう。


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